植物の環境感覚:刺激受容から細胞応答まで - 文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究 平成22年度~26年度

A02 公募研究:受容体・細胞応答機構

陸上植物における環境応答機構の普遍性と多様性

研究代表者 河内 孝之  京都大学大学院生命科学研究科・教授 研究代表者ホームページ
連携研究者 石崎 公庸 京都大学大学院生命科学研究科・助教
大和 勝幸 近畿大学生物理工学部・准教授

研究概要

 水中で出現した光合成生物は、進化の過程で細胞レベルから個体レベルの環境適応力を獲得し陸上進出を果たした。陸上では無機成分や水を吸収するため地面に固着し、重力に対抗しながらも光を求めて成長する。陸上環境を識別し最適化する成長戦略を獲得し、種子植物は現在の繁栄に至った。進化の過程で遺伝子は獲得や喪失を繰り返しているものの基本的には遺伝子は祖先から継承し、変異を蓄積しながら機能を多様化させている。環境のセンシングとその応答を理解するために、進化の道筋を辿り、鍵となる生物を解析することが非常に有効である。  
 苔類ゼニゴケは、陸上植物進化の基部に位置し、生活環の大半が半数体である。ゼニゴケは、全ゲノム解読がほぼ完成し、遺伝的冗長性が極めて低いことがわかってきた。これは、独自の生活環と遺伝子導入が極めて容易であることも相まって、単に配列解析に留まらない実験上の利点が多数ある。光受容体フィトクロム、クリプトクロム、フォトトロピンは、いずれも1分子種であり、信号伝達経路やその相互作用を理解する上で有利である。種子植物と相同性をもつ時計成分や入出力系因子も存在し、陸上植物がもつ遺伝子セットの基本形をほぼすべてもつ。  
 赤色光依存的な細胞分裂や青色光によるオルガネラ定位運動など細胞レベルでの環境応答の観察も極めて容易である。個体応答や細胞内の観察も適しており、表現型を指標にした突然変異体の分離と原因遺伝子の同定にも適している。細胞から個体に至る環境応答を順遺伝学的あるいは逆遺伝学的に容易に解析できる。ゼニゴケの環境識別機構を他の植物種と比較解析することで、植物の「環境感覚」の普遍性と多様性を理解することができる。

図:概略図

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Copyright ©2010 文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究「植物の環境感覚:刺激受容から細胞応答まで」