A01 公募研究:個別刺激応答機
植物の匂い感覚メカニズムの解明
研究代表者 | 東原 和成 | 東京大学大学院農学生命科学研究科・教授 | ![]() |
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研究概要
植物は食害や病害を受けた際の防衛応答の一つとして、匂い物質を放出する。放出された匂い物質は、草食性昆虫や病原菌に対して忌避作用を示したり、食害をもたらした草食性昆虫の捕食者を誘因したりする。一方で、植物が食害を受けた際に放出する匂い物質の中には、隣接する植物に受容され、食害に備えての防御反応を誘導するものが存在する。つまり、植物は匂い物質を介して、自らが受けた病害や虫害などのストレス情報を他個体に発信している。そして、その匂い情報を受容した個体は、防衛応答を発動させ、未然にストレスに対して身を守る体制を整える。つまり、植物個体間の匂いを介したコミュニケーションは、植物の生存戦略のひとつであると考えられる。しかし、植物は動物のような嗅覚受容体や嗅神経系を持たないため、植物がどのように匂い物質を受容し、どのようなメカニズムで応答しているのかは未だほとんど解明されていない。そこで、本研究では、植物の環境感覚の一つである匂い刺激に対する応答の分子メカニズムを明らかにする。植物は、様々な環境変化から身を守る術をもつだけでなく、変化に対する適応戦略を獲得してきている。環境感覚の典型として、光、温度、水分などの刺激応答があるが、匂いという化学変化も、植物にとって環境からの重要な刺激のひとつである。植物の匂い物質受容機構と、植物にとっての匂い放出と受容の意義を解明することによって、当該領域の植物の環境応答の総合的理解という目的に貢献する。
