植物の環境感覚:刺激受容から細胞応答まで - 文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究 平成22年度~26年度

A03-ケ 計画研究 : 『植物細胞場』解析技術開発

計画研究ケ:フェムト秒レーザーを駆使した植物細胞の局所操作と刺激法の開発

研究代表者 細川 陽一郎 奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科・准教授 研究代表者ホームページ
連携研究者 飯野 敬矩 奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科・博士研究員

研究概要

光エネルギーを百兆分の1秒(フェムト秒)の時間領域に集中させたフェムト秒レーザーでは、複数個の光子が1つの分子に同時に吸収される多光子吸収が高効率に起こる。このレーザーを顕微鏡で集光した場合、光子が最も集中する集光点のみで多光子吸収が引き起こされ、高いレーザーエネルギーを注入した場合、集光点では光吸収に留まらず、切断現象や爆発現象が引き起こされる。本研究では、この局所的な切断現象や爆発現象を駆使し、生きた植物組織のレーザーマイクロダイセクション(LMD)や植物細胞内のオルガネラの操作を実現することを目指す。フェムト秒レーザーにより固体材料を切断した場合、光化学的・熱的変性がほとんどない機械的な掘削に近い切断が引き起こされる。このフェムト秒レーザーによる切断をLMDに利用した場合、従来のLMDで用いられている紫外レーザーでは切断が難しい組織でも組織を変性させずに切断・分離できると考えられる。さらに本研究ではフェムト秒レーザーを水溶液中に集光したときに生じる爆発現象を利用し、液中にある組織断片からでも目的部位を回収するできる新システムを構築する。このシステムにより、生理的な条件で環境刺激を与えた植物組織から1細胞をそのまま回収し、その遺伝子発現過程を解析することが可能になる。さらに、レーザーエネルギーを調整して、その爆発現象を細胞内の局所領域に局在させ、その衝撃をオルガネラに付加することで、強固に接着したオルガネラ間の接着をも人為的に引き剥がせると考えられる。この力と光ピンセットを駆使して、環境刺激を与えた細胞内のオルガネラ間の相互作用を調べる。これらの研究を通じて、植物の環境応答性について明らかにしていく。

図1:フェムト秒レーザー誘起衝撃力により刺激された神経細胞内のCa2+濃度の上昇 細胞内のCa2+はカルシウム
       インディケーター(Fluo-8)により可視化されており、衝撃力の付加後の蛍光強度の増加は、 Ca2+濃度の上昇
       を意味する。
図2:フェムト秒レーザーによるゼブラフィッシュ胚への蛍光分子の導入:レーザーを照射した箇所(矢印)に、細胞内
       に分子が導入されたことを示す強い蛍光がみられる。
図3:フェムト秒レーザーによるオオカナダモのレーザーマイクロダイセクション(LMD):切断は水中でおこなわれており
       切断箇所内部の細胞では、葉緑体の顆粒が保たれている。

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